2014/11/7 自立指導成功塾最強コラムレポート[2]

自立学習指導塾「成功の法則」①

第1回の事例報告は、研究会の理事に就任された鈴木先生です。岐阜県下呂市という「市」とは名ばかりの田舎(失礼!)で「共育学舎」という自立学習指導の塾を、一人で切り盛りされている典型的な個人塾の経営者です。

 共育学舎近隣の学校は、小学校なら1クラス、中学校でも学年80人程度しか生徒が在籍していません。まあ、塾生が50人もいたら「凄い!」と言えるような地域です。共育学舎も過去、60名程度が最大値だったようです。例年は50名前後で推移していました。ところが地域の過疎化が進み、少子化が本格的になった近年、塾生数の減少が激しく、ついに昨年春、塾生数が17名になってしまいました。一昨年春の入塾者数は、わずか3名です。このままでは春期募集が終わっても、塾生数20名前後という危機的状況を迎えます。

 …で、私にHELPの連絡が入ります。「ゴールデン・ウィークまでに30名にしなければ、経営が成り立たない」と言うのです。

 そこで私は現地に入り、鈴木先生と戦略を練りました。まず指摘したのが「チラシ」です。前年のチラシを見せてもらったのですが、これが実に適当な?「メニューチラシ」「ご挨拶チラシ」でした。これでは3名しか集客できないのも道理です。そこで私は、「認知7回の法則」に則って、2月~3月に7回のチラシを投入することを提案しました。資金もないので、原稿は私がワードで作成し、印刷も自社の輪転機を回した白黒です。

 合わせて、小冊子の作成と保護者対象の教育セミナーも実施しました。

 詳しい内容は省きますが、結果、17名の集客に成功しました。(私も今年になって知ったのですが、内3名は体験だけで入塾辞退。最終的には14名の入塾、計31名で2012年度はスタートしました。まあ、とりあえず30名のデッドラインは超えたわけです)

 その後も、鈴木先生の格闘は続きます。私の指導(アドバイス)に対する反発もありました。(鈴木先生から「包み隠さず披露してください」との申し出がありましたので、正直に報告します)

 例えば、私は「手書きの手紙」を書くことを10年前からお勧めしています。鈴木先生にも生徒への手紙を書くことを求めました。しかし先生は、「書く内容が見つからない」と逡巡します。

「書く内容が見つからない?フザケルナ~」

 私の役目は鈴木先生の「子守り」ではありません。共育学舎の生徒数を増やすことです。正直、きつい物言いをしたこともあります。(未だに鈴木先生は「森と会う時は緊張する」と言います)私も真剣ですから一歩も引きません。手紙が書けないのはいい。では、何をもって生徒・保護者とコミュニケーションを図るのか、代案を考えてください!

 そんな真剣勝負の「やりとり」が二人の間に半年間続きました。この頃のことを鈴木先生は「私は、できない理由を一所懸命探していました」と述懐されます。

 そして私が指導を離れて半年後、2013年の春に鈴木先生から嬉しい報告が届きます。2013年は自力で集客活動を行い、15名の入塾者を確保、全体でも5年前の水準(49名)まで復活したと言うのです。

 素晴らしい!

 その報告メールの中に、印象的な言葉がありました…「全身全霊」

 もしかしたら、「森を見返してやろう」という思いが鈴木先生の中にあったのかもしれません。それで発奮し、自力でV字回復をしたのだとすれば、それこそ私の本分です。私が主宰しているのは「実践会」です。塾長自ら実践することを求め、そのための情報やアドバイスをすることが私の役目です。

 あの頑なだった鈴木先生でも?殻を破って塾を成長させることができる…そこに中小・個人塾の可能性とパワーを見、この研究会を立ち上げようという私のエネルギーにもなりました。鈴木先生に感謝、多謝です。

共育学舎は、1フロアの教室にスクールデスクを無造作に並べています。壁際にはパソコン・ブースがあります。これは高校生が映像教材(@will)を見るためのものです。昨年は中学生も@willを使っていたのですが、集中して映像を見られない生徒が多く、今年は使っていません。純粋にワーク教材(英数は学書のベーシック、理社はスプリックス)だけで指導をしています。

 現在、49名の塾生数ですが、最も多いのが高校生、次が中学生、小学生は数えるほどです。自立学習指導の場合、どうしても小学生の集客は難しい。中学生・高校生中心の構成になります。

 中学生のほとんどは週2回の通塾です。1回が50分×3コマです。[英語-3コマ,数学-3コマ]の生徒もいれば、[英語-2コマ,数学-2コマ,理科-1コマ,社会-1コマ]の生徒もいます。驚くのは、いわゆる宿題がないことです。「自立学習を標榜しておきながら、宿題という強制学習を課すのはおかしい」という理由からです。家庭学習すら自立を求めています。

 それで成績が上がるのかと疑問に思ったのですが、6月の試験は中学生全体の平均点が430点というハイ・アベレージです。
 いくら年度最初のテストは簡単だと言っても、おいそれと叩き出せるスコアではありません。どうやら、昨年秋から唱えている塾のコンセプトが浸透してきたのが原因のようです。

 鈴木先生は自塾を勉強道場(スタディ・ジム)と位置付け、教室内は修業の場?と考えています。そのため生徒たちは、文字通り黙々と学習に励んでいます。多いときは一度に20人以上の生徒が教室で勉強しているのですが、それを鈴木先生一人で管理し、私語のない学習空間を保っています。あまりに静か過ぎて硬直した空気を掻き混ぜるために、鈴木先生自ら緩和の工夫(頃合いを見計らって雑談を挟む)をしているくらいです。

 以前は、いかに静かな空間を維持するかに苦心していたそうです。私語を許さず、時には厳しい指導もしていたようです。しかし、それは生徒にプレッシャーを与えるだけで効果的ではないと知り、今のようなスタイルに変更したのです。ここにも大きなヒントが潜んでいます。

 どうしても個人塾の自立学習指導の場合、いかに私語を禁じ、静かな環境を維持するかに視点が置かれます。しかし、そうした硬直した空間が生徒にとって居心地がいいかと考えた場合、別の答が見えてきます。人は、図書館のような無音の環境よりも、街の喫茶店程度の雑音が入る環境の方が、事務的能率が高いことが知られています。塾によっては小鳥のさえずりや水の流れる音をバック・グランド・ミュージックとして教室に流しているところもあります。理論武装をした上で、多少の雑音?を取り入れるのは「有り」でしょう。

 鈴木先生の実践から分かることは、一度に二十数名、多分、三十名でも四十名でも塾長ひとりで管理できるということ。そして、映像教材を用いなくても、ワーク教材だけで充分成績向上を達成できることです。この方式ならば、塾生50名で経営は成立します。

 高校生が多い理由は、教室が最寄の駅に近いことが挙げられます。生徒は学校帰りに塾に寄り、そのまま駅から帰宅の途につきます。

 その条件ならば、門配ならぬ駅配が有効です。この方法は鈴木先生の苦手な分野でしょう。鈴木先生に限らず、中小・個人塾の経営者は皆、苦手です。しかし、駅に近いという利点を生かさない手はない。ならば、駅配は有効な手段です。また、駅に看板を出すことも効果的でしょう。共育学舎が今後、さらに発展するためのマーケティング手法として、ぜひ取り組むことをお勧めします。どうしても苦手で出来ないのなら、代案を必死で考えてください。

 鈴木先生はフェイス・ツー・フェイスのコミュニケーションが得意ではありません。雑談ならいいのですが、改まった面談(特に保護者面談)も苦手なようです。手紙も書けない…その代案としてメールを駆使しています。一斉メールは毎日、個別メールも1日に3通程度発信しています。

 また、ニュースレターにも工夫を始めました。以前はインフォメーション中心だったのを、パーソナルな情報(趣味の話や旅行先の見聞録)を意識して伝えるようにしています。すると、メールの返事に「ニュースレターのあの記事、面白かったですよ」と反応が増えたそうです。

 情報を伝えるだけはインフォメーション、リアクションがあってはじめてコミュニケーションです。特に個人塾は塾長の人柄が全てと言っても過言ではありません。チラシに自分の顔と名前を出し、普段の情報発信もパーソナルな内容を濃くすることが重要です。

 もともと自立学習指導塾は、塾長の手練手管、職人技?によって成立する塾です。鈴木先生の手法が全ての自立学習指導塾に通用するわけではありません。しかし、そのエキスは重要です。手法は違っても、生徒が自ら学習するモチベーションを高め、意欲的に学習に取り組ませることが必須です。さて、あなたはどんな手法で生徒に迫りますか?

塾生獲得実践会/主宰 自立学習指導研究会/顧問 森 智勝