2015/4/3 成功塾最強コラムレポート[7]

 前回、ワン・ツー・ワン・マーケティングの基本は顔と名前を覚えることだと言いました。当たり前のようですが、できていない塾が多いのも事実です。塾長ひとりで運営している個人塾は大丈夫だと思うのですが、複数のスタッフがいる、特に個別指導塾に多く見られる傾向です。例えば…

 その日、初めての授業を受けに新入塾生がやってきます。勝手が分からず、入口で立ち続けています。気付いた講師が声を掛けます。「誰?名前は?」

 生徒が田中と名乗ると、「ああ、今日からだね。聞いているよ。担当は山田先生だね。山田先生!今日からの生徒が来ていますよ~」と叫びます。担当の山田先生は、既存の生徒の対応に追われて新入塾生の存在を忘れていました。「ああ、こっちへおいで!えぇっと、名前は何だっけ?」

 学生アルバイトが主流の個別指導塾では日常的に見られる光景です。講師たちは自らの不手際を認識していません。ところが、生徒の気持ちになって考えてください。また、この様子を子どもから聞いた親の気持ちになって考えてください。我が子は軽んじられている…そう思うのではないでしょうか。

 原因は明らかです。塾長(教室長)が「今日から○○君が来るからよろしくね」と、ファイルと教材だけを担当講師に渡して済ませているからです。教室全体に新塾生を迎える意識が低いからです。

 もし、朝礼の時に新塾生の顔写真が貼られたファイルがスタッフ全員に配られ、顔と名前を全員が覚えていたらどうでしょう。入塾面談をした教室長だけでなく、初めて会った講師全員から「田中君だね。今日から頑張ろうね」と声を掛けられたらどうでしよう。きっと、田中君は家に帰ってから両親に話すことでしょう。「今日ね、塾に行ったら知らない先生も僕のことを知っていて声を掛けられたよ」と。

 本当の「面倒見の良さ」とはすぐに伝わらないものです。しかし、こうした周辺部分の工夫によって、その一端を実感させることは可能です。今では誰もがデジカメを持っています。入塾面談の時に、「記念写真」と称して親子の写真を撮ればいいのです。不思議なもので、一人だけの写真の顔は覚えにくいのですが、親子で写っていると二人とも覚えやすくなります。保護者会で、あるいは授業後に迎えに来ていたお母様に、「あっ、田中君のお母さん!」と声が掛けられたら…それだけで「田中君のお母さん」は感動することでしょう。一度会っただけなのに、覚えていてくれた、初めて会った先生が私のことを知ってくれている…そうした本来の面倒見の良さとは関係のない部分が人の感情を揺さぶります。この母親は塾のことを話すとき、「あの塾は面倒見がいいよ」と言ってくれることでしょう。

 もちろん、全ての生徒と母親の顔を覚えるのは至難の業(わざ)です。しかし、だからと言って何もしない塾と、それでもトライし続ける塾と、どちらの塾が支持されるか、言うまでもないことです。少なくとも教室長は毎日、親子で写った塾生のファイルを見ることをルーティーンにすることです。私は、そうした小さな積み重ねを厭(いと)わない塾が地域の評判を得、大きな支持を受けると考えています。