2015/3/3 成功塾最強コラムレポート[6]

 先月号で、「面倒見の良さは形に表さないといけない」という話をしました。なぜなら、形に表さなければ口コミ・評判を作れないからです。人は具体的な事象に触れて初めて、抽象的なイメージを持ちます。そして、抽象的な事象に触れると…反発するのです。例えば、「テストに向けてとことん指導します」という抽象的な文言を読んだ母親は、「そんなの塾だから当たり前でしょ。だって高い授業料を払っているんだから…」と思います。そこで、表現を具体的にします。「テスト前対策補講、年間128時間(昨年度実績)」と表記して初めて、「熱心な塾ね」という抽象的なイメージを与えることができるのです。

 「一人ひとりのために」という理念を掲げている塾は多いものです。また、保護者は「他の生徒はいざ知らず、我が子だけは熱心に教えてほしい」という本音を持っているのも事実です。ならば、「一人ひとりのために」も、形に表す必要があります。

 私の専門はマーケティングであり、教務に関することは割愛します。ただ、教務力は商品力そのものですから、ここが本物でなければ、どんなマーケティング手法を使っても効果はありません。その前提で以下の提案を読んでください。

 「一人ひとりのために」を実行するのに最適なのがワンツーワン・マーケティングです。文字通り店(塾)と客(生徒・保護者)を1対1で結びつけるマーケティング手法です。例えば…

 あなたの塾は生徒の誕生日を祝っていますでしょうか?誕生日というのは、自分だけの特別な日です。ぜひ、その日を祝ってあげてほしい。塾が我が子の誕生日を祝ってくれて喜ばない親はいません。手作りならなお良いのですが、既成のバースデイカードを利用しても構いません。ただ、ひとつだけコツがあります。文面を次のようにするのです。

「誕生日おめでとう。今日は、あなたを産み、育ててくれたご両親に感謝する日です」

 そして、必ず自宅に郵送します。塾からの手紙は、本人宛でも保護者(特に母親)は必ず目を通します。その保護者も感動させようという趣向です。

 母親という立場は、新川和江の詩でも表現されているように辛いものです。苦労が多くて報われることが少ない…多くの母親が、そこにストレスを感じています。そこに寄り添ってあげるのです。「ああ、この塾(先生)は、親の苦労を分かってくれている」と思ってもらうことです。

 そうした積み重ねの上に、口コミ・評判は生まれます。「あの塾は熱心だよ」の一言は、並大抵のことでは引き出せません。

 今からでしたら、クリスマス・カードを塾生に作ってもらい、保護者宛に送るという手法も有効です。

 何度も言いますが、「それだけで生徒が増えるわけ」ではありません。しかし、「そんなことしても無駄だ」と全てを切り捨てる塾と、そうした小さな積み重ねを続ける塾との間には大きな差が生まれます。

 ワンツーワン・マーケティングの基本は顔と名前を覚えることです。例えば、大企業の社長が若手社員を呼ぶ時、「あっ、そこの君!」と言うのと、「あっ、山本君」と言うのを想像してください。呼ばれた山本君の感情です。

 あなたは、全ての塾生と保護者の顔と名前を覚えていますでしょうか?

 もちろん、全ての生徒・保護者を覚えるのは至難の業です。しかしここでも、「無理だからやらない塾」と「無理と分かっていてもチャレンジする塾」で大きく差が生まれます。工夫することです。その手法については次回、説明します。